愛する家族、故郷、受け継いだ土地を守るため日々奮闘
2026.05.29

瀬戸内海に面し、愛媛県のほぼ中央。
豊かな自然に囲まれており、美しい海岸線や山々が魅力の愛媛県伊予市。
サラリーマンを辞めて農家になると決めた田中さん。
令和元年、故郷伊予市で田中さん家族は新たな人生を歩みだす。
多忙な毎日を過ごす
この時期は、朝6時から働き始め、仕事が終わるのはなんと夜中の23時。
種まき、水やり、肥料管理、雑草取り、収穫、出荷・・・やることは山ほどある。
この日、夕方に取材を行ったが、この後も田中さんの仕事は続くという・・・。

「とにかく眠いっす」
疲れているにも関わらず、笑顔で取材の質問に答えてくれる田中さん。
夏野菜の〇〇を栽培するのは博打
現在ハウス栽培も兼ねて年中ナスを栽培している田中さん。
たくさんの野菜を栽培しているが、その中でもナスは田中さんの主力野菜である。
「ナスは比較的価格が安定している」と話す。
逆に変動が激しい野菜は?と聞くと、
「きゅうりはまさに博打ですよ。4kg40本入りが200円の時もあれば2,000円もある。」
続けて、「きゅうりはとにかく管理が大変でめちゃくちゃ忙しい。」と話された。
正直4kg40本入り2,000円でも安すぎると感じ、農業の厳しさと現実を知った。
地域を愛し、愛されるクマさん
田中さんは伊予市学校給食センターにも野菜を納品している。
「一生懸命作った野菜を食べてもらい、子どもたちから”おいしかった”と言われたり、先生から”残食無かったよ”と言ってもらえるとすごくやりがいを感じる。」
そして田中さんは、少し照れながらこう続けた
「子どもたちが僕を見かけると”クマさん~!”と笑顔で手を振ってくれる。クマさんと呼んでくれることが相当嬉しい。何よりも嬉しい。」
見た目は少し怖そうだけど、話してみるとすごく優しい田中さん。老若男女問わずみんなに愛されている伊予市のクマさん🐻である。


田中さんオリジナルTシャツ(非売品)。娘さんがデザインした。この腕のクマさん5体は、田中さん家族を表現して描いている。なんとも微笑ましい。
今の時代こそ地域との繋がりを大切に


新型コロナウイルス禍以降、愛護班やPTAの活動が減ったことから、子どもたちが地域で交流できる場をつくりたいとの一心で、住民グループ「上三谷こども菜園」を立ち上げ、田中さんは副リーダーとして精力的に活動されている。
「どろんこ祭り」は地元の小学生や保護者ら約50人が泥まみれになってかけっこやそり遊びを楽しむ6月の恒例行事となっている。その他にも地域の子どもや大人が集まって、旬の野菜を一緒に植えて収穫している。
こうした地域活動を積極的に参加することによって、知らない人と知り合えるきっかけとなり、交流が生まれ、地域の繋がりがより広がっていく。
また田中さんは地元小学校の行事の一環として、野菜収穫体験を受け入れている。収穫した野菜は学校給食センターで調理されて給食として提供される。児童は普段の生活では味わえない体験を通して、農業への理解や感謝の気持ちを体感している。田中さんはこうした食育の推進にも大きく携わっている。
田中さんに立ちはだかる壁

「順風満帆ではなかった。」
そう当時を振り返る田中さん。
自身の健康問題、気候変動、防虫除草方法など様々な壁にぶつかり、今も田中さんは試行錯誤している。
「どの時期に何を作付けするか年間の予定を立てても天候によって予定が大きくずれてしまい、なかなか予定通りに進まない。」
天候によって、予定通りに作物が作れず、収入にも影響がでる。
そのほかにも、
「雨がたくさん降って土が練ってしまい、土がサラサラにならず、キャベツの植え付けが1か月遅くなった。ようやく植え付けできたと思ったら雨が全く降らず、作物が成長せず、思った量を収穫することができなかった。」
「玉ねぎやキャベツの畑はすぐに雑草が生えるので、作物は枯らさずに雑草だけを枯らす薬剤があるけど、それをどの種類でいつやればいいのか分からず試行錯誤している。」
自然相手の農業。本当に思い通りにはならない。
農家はこれらのリスクを最小限に抑えるため、さまざまな対策を講じているものの、その労力は計り知れない。
また、野菜の価格について田中さんは「他の物はどんどん値上げされるが、農産物だけは価格が上がらない。」と苦悩を語った。
エネルギーや肥料などの生産資材価格が上昇しているにもかかわらず、農産物の販売価格は決して上がっていないのだ。
私たちが食べている野菜の背景には農家の苦労と情熱が隠れている。絶対に感謝を忘れてはならないと再認識した。
受け継いだ土地を守り抜く
田中さんに仕事で心掛けていることをお聞きすると、
「心掛けていることの一つとして、先祖代々の大事な土地を絶やすことなく、守っていかなければならないと思っています。」と答えられた。
農業において土地を守ることは、単に畑や田んぼを維持するだけではなく、土壌や自然環境を守り、次の世代へ豊かな農地を引き継ぐことを意味する。
現在長女が農業を専攻されており、近い将来親子で農業をする姿を見れるかもしれない。
若年層の農家増えてほしい
田中さんに若年層の農家は増えてほしいと思うか聞いてみたところ、
「それはすごく思います!」と即答され、
「やはり同年代の農家が増えることで色々相談しやすくなるし、お互い気を遣わずにワイワイできると思う。」と笑顔で答えられた。
また、「農家が増えることで、お米を収穫した後にその土地で野菜をつくれたら更に地域の農業が活気づく。」と話された。
最後に、伊予市で農業を考えている方(移住希望者)に向けて、
「やる気がある方で、何かしら接することがあれば一緒にワイワイ盛り上げていきたい。」と述べられた。
やればできる

田中さんは壁を乗り越ようと日々奮闘している。
うまくいかず、目の前が真っ暗になり不安になる。挫折しそうになる。
そんな時、ティモンディ高岸さんの言葉を思い出す。
「やればできる」
何度でもチャレンジすることで壁は絶対に乗り越えられる。
その言葉を胸に刻み、今日も前向きに頑張る。
愛する家族と地域のために。
取材:デンジャラスK
PROFILE

田中 靖興(たなか やすおき)
愛媛県伊予市出身。元サラリーマン。令和元年度から農業を始める。代々引き継いだ土地で奮闘しながら美味しい野菜をつくっている。
ナスを中心に栽培されており、キャベツ、きゅうり、玉ねぎ、レタスなど数多くの野菜を育てている。




