東大みかん愛好会がゆく~①ロジカルにみかんと向き合う編~
2026.04.17

「みかんをこよなく愛する」東京大学などの学生で結成された「東大みかん愛好会」。
およそ300人の学生が所属し、首都圏を中心に日々活動しています。
3月、「かんきつ王国」愛媛で、生産への理解を深める春の合宿を行い、伊予市内で収穫体験を行いました!
参加した4人の学生が、伊予市で感じたことを記事にしてくれましたので、ご紹介します!
1回目は「~ロジカルにみかんと向き合う編~」(取材:吉井)です!
ロジカルにみかんと向き合う 成内さんが見据える新しい“みかん作り”の景色
愛媛県伊予市。豊かな自然に囲まれたこの地では、数多くのみかん農家がそれぞれのこだわりを持ってみかんと向き合っています。
そんな中で、ひときわ個性的な視線をみかんに注ぐ農家さんがいました。
伊予市双海町で愛媛果試第28号などの柑橘を栽培する、成内さんです。

今回僕は「東大みかん愛好会」の活動の一環として成内さんと交流し、農作業を体験してきました。本記事ではその様子をレポートしていこうと思います。成内さんは自称「ごく普通の農家」とのことですが、その真偽のほどはこの記事を読んでお確かめください。
成内さんとの出会いは、みかん愛好会、愛媛の大学生、農家さんや地域おこし協力隊の人たちといった地元の人たちとの交流会を兼ねた食事会。みなが会話に花を咲かせ、賑やかに卓を囲む中、成内さんは数字がびっしり書かれた紙を取り出し、僕たちに見せてくれました。

そこには、毎日決まった時間に計測された栽培中のみかんの横径、高さ、重さといったデータが丁寧に記録されていました。
そう、成内さんは自身の作物のデータを徹底的に集め、それらを分析することで誰よりもロジカルにみかん栽培を行っている方だったのです。
例えば、同じみかんの大きさを1日に複数回計測することで、成内さんはみかんが1日の中で微妙に小さくなったり大きくなったりすることに気が付きました。その変化を“肥大曲線”としてグラフ化し、さらにそれを微分することで“肥大率”、つまり1日のうちどの時間でみかんがどれくらい大きくなりやすいのかを分析しているそうです。その結果を見ることで、どの時間に水やりをするのが最も効率的なのかといったことが分かるのではないかと成内さんは言います。
数学が苦手な人にとってはもうすでに頭から煙が出そうな話かもしれませんが、理系の端くれである僕としては、成内さんの「定量化して最適化したい!」という願望には共感せずにはいられませんでした。
他にも、ハウス内の木のレイアウトも数学的に効率の良い配置を考えているなど、成内さんのこだわりは留まるところを知りません。成内さんのことを愛をこめて「変態」と呼ぶ人もいるほどですが、ご本人は「逆になんで他の農家は微分をしないんだ?」と主張します。なんだか僕もそんな気がしてきました!(洗脳済み)
そんなこんなで成内さんと話しているうちに気づけば食事会も終了。そういえば成内さんが箸を持っている姿をほとんど見ていないような・・・。
(後日聞いたところ、「腹減ったな~」と思いながら帰宅したとのこと。やっぱり!)
次の日は、実際に成内さんの農園にお邪魔して農作業体験をしました。体験させていただいたのは、それぞれの木の根元に盛られた堆肥を、ひたすら手でほぐして広げていく作業。

「摘果とか収穫とか、そういった綺麗な作業だけを体験して“農作業を体験した!”と思ってほしくない。こういう地味な汚れ作業こそが本当の農業なんだ。」成内さんはそう語ります。正直なところ、僕も「農作業」と聞くと収穫などの作業ばかりをイメージしがちでした。だからこそ、「腰が痛いな~」と思いながら土と向き合った時間は僕の価値観を大きく変えてくれました。
堆肥は根元に盛るだけで、あとは風雨で自然に広がるのに任せる農家さんも多いそうです。しかし、成内さんは「こうやって手で広げてあげる方が土にとっては良いんだ」と言って手間を惜しみません。

「土の質で、みかんの品質も全然違ってくる。」その熱のこもった言葉からは、みかんへの並々ならぬ情熱が感じ取れました。
地道な作業も手間を惜しまずこなしながら、毎日たくさんのデータをとることも欠かさない成内さん。その苦労は察するに余りあります。そのうえ、参考書を買って数学を学び直したり、農作業中にもイヤホンで学習動画を聞き流したりと、大学生の僕も頭が下がるほどの知識欲が伺えます。
何が成内さんをここまで突き動かすのでしょうか。
成内さんは語ります。「この苦労の先に、素晴らしい景色が見られると信じている。」と。

農業の世界には、長年の経験や職人の勘といった、言葉では伝えきれない「暗黙知」が数多く存在します。成内さんの挑む「データの分析による最適化」は、こういった属人的な技術を次世代に継承しやすくするという意味でも有意義なものであると僕は考えます。
・・・むろん、成内さんを突き動かす最たる原動力は、そういった意義というよりも、「対象があったらデータをとってみたくなり、データの羅列があれば視覚化して分析せずにはいられない」といった、ある種の理系の本能的なものといえるのかもしれませんけどね。

(取材:吉井)
みなさん、いかがでしたか?
次回は「~②紅プリンセスのおいしさの裏側編~」をお届けします!
お楽しみに!
東大みかん愛好会
国内のみかんの消費量を増やそうと、2013年に発足。
関東を中心に学生約300人が所属している。
かんきつの魅力を発信する活動に取り組むほか、産地を訪問して生産工程を学んだり、収穫作業を手伝ったりしている。




